立地評価ガイド
東京 23 区で災害に強い街 TOP10 — ハザード指標で読む立地ランキング
公開: 2026 年 7 月 15 日 · SafeLand 編集部
「東京で災害に強い街はどこ?」という問いは、単純に見えて実は多層的です。洪水・土砂災害・液状化・地震動の 4 つの主要リスクは、それぞれ地形と地質によって支配されており、区単位で見ると「武蔵野台地」「山の手台地」に載っている区が構造的にリスクが低いという傾向がはっきり出ます。
この記事では、国土交通省の「重ねるハザードマップ」と国土地理院の標高データを元に、23 区を 4 つのハザード指標で並べた TOP10 ランキングを紹介します。同時に、各区の弱点、住所単位で見るべきポイント、そして「区単位のランキングだけでは判断できない理由」まで解説します。
ランキングの判定基準
今回の TOP10 は、以下 4 指標を編集部が構造的に評価した結果です。
- 洪水浸水想定区域の面積比率 (国土交通省・想定最大規模)
- 土砂災害警戒区域 (イエロー / レッド) の指定件数 (都道府県告示)
- 液状化発生の可能性 (東京都液状化予測図)
- 平均標高 (国土地理院 5m メッシュ DEM)
すべて公的機関が無料で公開しているデータで、誰でも住所単位で追検証できます。
TOP10 ランキング
千代田区皇居台地
強み: 皇居を中心に大部分が武蔵野台地の東端に載っており、標高は最も低い神田付近でも約 5-15m。洪水浸水想定区域は日本橋川沿いの限られた低地に留まり、23 区内で最も面積比が小さい。土砂災害警戒区域は指定なし。
弱点: 神田・秋葉原周辺の低地帯は隅田川氾濫時に一部浸水想定あり。液状化はごく限定的だが埋立や川跡の地番では要確認。
港区山の手台地
強み: 麻布・青山・白金など台地上の高級住宅街が中心。台地部分は洪水浸水想定区域から外れ、標高 20-30m を維持。土砂災害警戒区域は数十箇所と少なく、指定は局所的な急傾斜地に限られる。
弱点: 台場・芝浦・海岸エリアは液状化発生の可能性が高く津波浸水想定にも含まれる。同じ区内でも高台と低地/埋立で災害プロファイルが大きく分かれる。
文京区本郷台地
強み: 本郷・小石川・白山・大塚など台地上の住宅街で構成され、23 区内で標高が最も安定して高い区の一つ。洪水浸水想定区域は神田川沿いのごく一部で、住宅街の大半は浸水リスクほぼゼロ。液状化リスクも 23 区中最低クラス。
弱点: 本郷台地の縁 (茗荷谷・音羽・護国寺周辺の斜面) は土砂災害警戒区域が点在。台地と谷の高低差が大きい地形なので、住所により risk が急に変わる。
新宿区淀橋台
強み: 西新宿・四谷・市谷・落合など台地上の住宅・オフィス街が広がる。新宿駅周辺は淀橋台と呼ばれる高台にあり、標高 30m 前後。洪水浸水想定区域は妙正寺川・神田川沿いに限定される。
弱点: 神田川流域 (東中野・下落合の低地) は浸水想定が濃く、想定深 3m 超のエリアもある。北西部は谷筋が入り組むので同じ区内でも risk 差が大きい。
杉並区武蔵野台地
強み: 区全体が武蔵野台地上に位置し、標高 40-50m と 23 区で最も安定して高い。土砂災害警戒区域はほぼ指定なし、液状化発生の可能性も全域で低いエリアが大半を占める。
弱点: 善福寺川・神田川・妙正寺川沿いの帯状の低地は集中豪雨での内水氾濫リスクあり (2005 年の善福寺川内水氾濫が典型)。想定浸水深は台地部からのランオフを含めて要確認。
練馬区武蔵野台地北部
強み: 区の大半が武蔵野台地北部に位置し、標高 40-60m。洪水浸水想定区域は石神井川・白子川沿いに限定され、面積比は 23 区でも小さいクラス。土砂災害警戒区域はほぼ指定なし。
弱点: 石神井川流域 (下石神井・上石神井の一部) と白子川沿いの北部低地は内水氾濫リスクあり。液状化は西部の一部で「可能性あり」区分が出るため要確認。
中野区武蔵野台地
強み: 区全体が武蔵野台地上、標高 30-45m。土砂災害警戒区域は指定なし、液状化発生の可能性も低いエリアが大半。中野・鷺宮・野方など主要住宅街は洪水浸水想定区域外。
弱点: 神田川・妙正寺川沿いの帯状の低地 (弥生町・南台の一部) は想定浸水深が 1-3m のエリアあり。西武新宿線沿いの低地帯も内水氾濫リスク。
世田谷区武蔵野台地南部
強み: 成城・田園調布 (一部)・用賀・弦巻など台地上の住宅街が中心。標高 30-50m の台地部分が広く、洪水浸水想定区域面積比は 23 区で中位。土砂災害警戒区域は多摩川崖線に沿った局所的な急斜面のみ。
弱点: 多摩川沿いの低地帯 (二子玉川・玉堤・鎌田) は 2019 年台風 19 号で実際に浸水した実績あり。仙川・野川・呑川沿いの帯状の低地も要チェック。
目黒区目黒台地
強み: 自由が丘・柿の木坂・八雲・碑文谷など目黒台地上の住宅街が中心。標高 30-40m を維持し、洪水浸水想定区域は目黒川・呑川沿いに限定。土砂災害警戒区域は目黒川沿いの崖線に局所的。
弱点: 目黒川流域 (中目黒・上目黒の一部) は浸水想定が濃く、想定深 3m 超区間あり。呑川沿いの東西 400m 帯状も内水氾濫の観察頻度高め。
渋谷区山の手台地
強み: 代々木・広尾・松濤・恵比寿など台地上の住宅街が中心。標高 20-35m を維持。液状化発生の可能性は 23 区で最低クラスで、区全体としてはハザード指標が良好。
弱点: 渋谷駅周辺は複数の谷が集まる「渋谷底」で、集中豪雨で内水氾濫が繰り返し観察されている。渋谷川・古川流域の低地は浸水想定深 3m 超も。
なぜ上位が「台地」の区に偏るのか
TOP10 の共通項は、区の大半が武蔵野台地・山の手台地・本郷台地という関東ローム層に覆われた洪積台地上に位置していることです。台地は(1) 標高 20-50m あり洪水被害を受けにくい、(2) 支持層が浅く液状化しにくい、(3) 傾斜が緩やかで土砂災害警戒区域が少ないという 3 つの特性を同時に満たします。
逆に、隅田川・荒川以東の低地帯 (江東・江戸川・墨田・葛飾・足立・荒川区) はゼロメートル地帯を含む沖積低地で、洪水・液状化ともにリスクが構造的に高くなります。生活便や地価とのトレードオフはありますが、ハザードだけで見ると差は明確です。
「区単位のランキング」で判断してはいけない理由
TOP10 に入っていても、区内には川筋の低地・谷底・崖線など局所的な高リスク地帯が必ず存在します。世田谷区の多摩川沿い、渋谷区の渋谷底、目黒区の目黒川沿い、新宿区の神田川流域はいずれも「同じ区内なのに浸水想定深 3m 超」というエリアを含みます。
逆に低位ランクの区であっても、局所的に高台の住宅街が存在します。台東区の上野台地、荒川区の道灌山、足立区の関原・伊興あたりは同じ区内でも標高と地形が明確に異なります。
つまり、ランキングは「候補区の絞り込み」までであり、最終判断は住所単位で個別のハザードマップを見る必要があるということです。
住所単位で判定する手順
物件が決まったら、以下の 3 ステップで住所単位の risk を確定させます。
- 国土交通省の「重ねるハザードマップ」 disaportal.gsi.go.jp で住所検索
- 洪水・土砂・液状化・津波の 4 レイヤーを個別にオン/オフして色分けを確認
- 国土地理院「地理院地図」 maps.gsi.go.jp で明治期の旧河道・埋立履歴を重ね表示
より詳細な手順は 「ハザードマップの読み方 5 ステップ」で解説しています。
ハザードと同時に見るべき指標
ハザードだけで街を選ぶと、資産性や利便性を落とす選択になります。実務的には以下の指標を並行して見るのが健全です。
- 空き家率: 街の衰退の最も早いシグナル (詳細ガイド)
- 地価トレンド: 過去 5 年の変化率で街の勢いを測る (Reinfolib で取得可)
- 生活便: 医療・買い物・教育のアクセス
- 人口動態: 若年層流入 / 転出超過の方向
自分の街を診断する
SafeLand の立地診断は、上記のハザード情報に加えて、e-Stat の人口動態、Reinfolib の取引価格、Google Places の生活便を統合して、住所単位で A〜D グレードで返します。TOP10 の区に興味を持った方も、住所を入れると個別の地番でどう評価されるかがすぐわかります。
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