立地評価ガイド
重要事項説明で必ず確認したい災害項目チェックリスト — 説明義務があるもの・ないもの
公開: 2026 年 8 月 21 日 · SafeLand 編集部
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不動産の売買・賃貸契約の直前には、宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。ここで災害リスクについても説明を受けるため、「不動産会社が説明してくれるなら自分で調べなくてよい」と考える人は少なくありません。
しかしこれは重要事項説明の役割を誤解している状態です。宅建業法が求めているのは、限られた項目について「該当するかどうか」を伝えることであって、その土地の災害リスクを総合的に評価して説明することではありません。
この記事では、法律上の説明義務がある災害項目 4 つと、説明義務がなく自分で調べるしかない項目を切り分けたうえで、説明当日に使える 6 ステップのチェック手順を示します。
重要事項説明は「災害リスクの説明」ではない
重要事項説明の災害関連項目は、いずれも「区域に該当するか」または「地図上のどこに位置するか」を示す義務として設計されています。リスクの大きさを評価する義務ではありません。
たとえば水害ハザードマップの説明義務は、マップを提示して物件の所在地を示すところまでです。「想定浸水深 3m のエリアなので 1 階の住戸は居住フロアが水没する想定です」といった解釈まで踏み込む義務はありません。宅建士がそこまで説明してくれることはありますが、それは担当者の良心であって制度上の保証ではないということです。
この線引きを理解しておくと、当日の臨み方が変わります。説明を受け身で聞く場ではなく、事前に調べたことの答え合わせをする場として使うのが正解です。
法律で説明義務がある災害項目 4 つ
宅建業法 35 条および同法施行規則により、以下の 4 項目が説明義務の対象です。
造成宅地防災区域内か否か
宅建業法施行規則 16 条の 4 の 3 第 1 号
過去に宅地造成が行われた一団の区域のうち、災害発生のおそれが大きいとして指定された区域。盛土や擁壁の安定性に関わるため、造成地の斜面に建つ物件では重要度が高い。宅地か建物か、売買か貸借かを問わず説明対象。
土砂災害警戒区域内か否か
宅建業法施行規則 16 条の 4 の 3 第 2 号
いわゆるイエローゾーン・レッドゾーン。傾斜地や谷筋の物件では必ず確認する。レッドゾーン(特別警戒区域)は建築物への損傷が想定されるエリアで、建築制限や火災保険料にも影響する。こちらも取引の種類を問わず説明対象。
津波災害警戒区域内か否か
宅建業法施行規則 16 条の 4 の 3 第 3 号
津波防災地域づくり法に基づく指定区域。沿岸部の物件で該当する場合、避難場所・避難経路の確認が必須になる。ただし指定は都道府県ごとに進捗が異なるため、「未指定=津波が来ない」ではない点に注意が必要。
水害ハザードマップ上の物件の所在地
2020 年 8 月 28 日施行の改正で追加
水防法に基づき市町村が作成した水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の所在地を示すことが義務化された。実務では説明書にマップを添付し、物件位置に印を付けて説明する。ここで示されるのは「位置」であって、浸水深の評価ではない。
このうち 4 つ目の水害ハザードマップの項目は、2020 年 8 月 28 日施行の宅建業法施行規則改正で追加された比較的新しい義務です。近年の大規模水災害の頻発を受け、水害リスク情報が契約意思決定の重要な要素であるという認識が制度に反映されたものです。実務では、重要事項説明書にハザードマップを添付し、本文には「別添ハザードマップ参照」等と記載したうえで、説明時にマップを示しながら物件位置を指し示す方法が一般的です。
なお、最初の 3 区域については宅地か建物か、売買か貸借かを問わず説明義務が生じます。賃貸契約でも対象である点は押さえておいてください。
説明義務が「ない」もの — 自分で調べる領域
ここが本記事の要点です。以下の項目は説明義務の対象外で、誰も教えてくれません。
液状化リスク
なぜ説明されないか: 35 条の説明項目に含まれず、宅建業者に調査義務がない。建物が傾く形で被害が出るため復旧費用が大きい。
どこで調べるか: 都道府県・市区町村の液状化マップ、国土地理院の治水地形分類図
想定浸水深そのものの評価
なぜ説明されないか: 義務はマップ上の「位置」を示すことまで。想定深が何 m で、その階数の住居にどう影響するかは説明対象外。
どこで調べるか: 重ねるハザードマップの色分けと凡例、浸水継続時間レイヤー
地盤の履歴(旧河道・旧池沼・盛土)
なぜ説明されないか: 造成宅地防災区域に指定されていなければ説明されない。指定は災害リスクが特に大きい区域に限られる。
どこで調べるか: 国土地理院「地理院地図」の明治期旧河道・土地条件図
内水氾濫の実績
なぜ説明されないか: ハザードマップは「想定」であり、過去に実際に冠水した記録は説明義務の対象外。都市部では想定より内水氾濫が先に効くことがある。
どこで調べるか: 自治体の浸水実績図、災害伝承碑、近隣住民への聞き取り
避難場所までの距離と経路
なぜ説明されないか: 指定緊急避難場所の位置は公開情報だが、物件からの距離や経路の安全性は説明されない。
どこで調べるか: 自治体の防災マップ、重ねるハザードマップの避難所レイヤー
街の将来性(空き家率・人口動態)
なぜ説明されないか: 災害項目ではないが、出口価格に直結する。宅建業者が説明する筋合いの情報ではない。
どこで調べるか: e-Stat の住宅・土地統計調査、国勢調査、Reinfolib の取引価格
特に液状化は注意が必要です。建物が数十センチ傾く形で被害が出るため、床上浸水よりも復旧費用が大きくなることがあります。それにもかかわらず宅建業法上の説明項目に含まれておらず、買主が自分で確認しない限り情報が出てこない構造になっています。
重要事項説明の当日に使う 6 ステップ
- 説明日の数日前に自分でハザードマップを見る — 重ねるハザードマップ で洪水・土砂災害・液状化・津波の 4 レイヤーを確認しておく。
- 添付された水害ハザードマップで物件位置を指で確認する — 口頭の要約で流されず、マップ上の印の位置を自分の目で見る。
- 3 区域の該当欄を読む — 造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域。「該当なし」の場合も、地形的に該当しないのか、単に指定が進んでいないのかを区別する。
- 想定浸水深と物件の階数を突き合わせる — 説明義務の対象外なので自分で判断する。浸水継続時間も併せて確認する。
- 液状化と地盤履歴を自分で確認する — 都道府県の液状化マップと 地理院地図 で旧河道・埋立の履歴を見る。
- 避難場所と経路を確認してから署名を判断する — 徒歩圏の指定緊急避難場所と、そこまでの経路がハザード区域を通らないかを地図で確認する。
宅建士にその場で聞くべき質問
説明義務の範囲外であっても、仲介会社が把握している情報は質問すれば答えてもらえることがあります。以下は聞く価値の高い質問です。
- この物件で過去に浸水・冠水の記録はありますか
- この建物の建築年と適用された耐震基準は何年のものですか
- (マンションの場合)受電設備・給水ポンプの設置階はどこですか
- この土地は造成地ですか、それとも自然地形ですか
- 火災保険の水災補償について、このエリアの保険料水準の目安はありますか
3 つ目は見落とされがちですが重要です。電気設備や給水ポンプが地下・1 階にあるマンションは、床上浸水しなくても停電・断水で生活不能になることがあります。浸水想定エリアの物件では、居住フロアの高さと同じくらい設備の設置階が効きます。
説明を受ける前にやっておくこと
重要事項説明は契約直前に行われるため、この場で初めて重大なリスクを知ると冷静な判断が難しくなります。手付金や引越しの段取りが進んだ後では、心理的に引き返しにくくなるためです。
そのため、ハザード確認は物件の申込みを入れる前に済ませておくのが本来の順序です。具体的な手順は 「ハザードマップの読み方 5 ステップ」で解説しています。エリアの絞り込み段階であれば、東京 23 区・大阪市の構造的な整理も参考になります。
署名前の最終判断
ハザード区域に該当することが、そのまま契約を見送る理由になるとは限りません。重要なのは、リスクを把握したうえで納得して選ぶことです。判断の軸は次の 3 点に集約されます。
- 居住フロアが想定浸水深より上か — 上なら浸水そのものより停電・断水が主な論点になる
- 避難の余地があるか — 徒歩圏の避難場所と、そこまでの安全な経路があるか
- コストに織り込めているか — 火災保険の水災補償、耐震補強、資産価値の見通し
SafeLand の立地診断は、ハザード情報に加えて、空き家率・人口動態・地価トレンド・生活便を統合し、住所単位で A〜D グレードを返します。重要事項説明で示される「該当の有無」の一段先にある総合判断を、契約前に確認する用途で使えます。
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